三枝特許事務所のブログを始めました。

本日、三枝特許事務所のブログを始めました。

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 今日は、最近気になっている業務ネタとして、「除くクレームとする補正」があります。「除くクレーム」は、通常、化学関係の特許において、引例に記載された素材や数値範囲を除くことによって新規性を確保するために用いられます。しかし、ここ数年、化学関係以外でも、拒絶理由通知に対する応答方法として、「除くクレームとする補正」が行われることが多くなってきました。

 簡単に説明しますと、本願発明がA+B+Cという構成を備えているとします。

 このとき、審査官が拒絶理由通知においてA+B+c+dという構成を備えた引用例を指摘したとします。ここで、cは構成Cに含まれる下位概念とします。引用例は、本願発明の構成A,B,Cを全て備えますので、新規性がないことになります。

 このとき、出願人が以下のように補正したとします。

 補正後の本願発明①:A+B+C、ただし、dを備えるものを除く。

 このようにすると、A+B+C+dという構成のものが除かれますので、本願発明は新規性を備えていることとなります。

 このとき、引用例において、dを設けないように改変することが、引用発明の目的から見てあり得ないことであれば、すなわち、dを削除することに阻害要因があれば、引用発明から本願発明を導くことはできず、本願発明は進歩性を有することとなります。

 この場合には、以下のように補正することも考えられます。

 補正後の本願発明②:A+B+C、ただし、構成Cが構成cであり、かつ、dを備えるものを除く。

 このようにすると、本願発明②では、除く範囲がさらに限定されているわけですから、結果として広い範囲をカバーすることができることになります。

 例えば、本願発明②には、本願発明①には含まれないもの、すなわち、A+B+Cのうち、dを備えるものではあっても、Cがcでないものが含まれることとなります。

 しかしながら、このとき、本願発明②には「dを備えるがCがcでない」ものが含まれる結果、本願発明②が上記拒絶理由を克服するには、当該ものについても、引用発明から容易に想到できないことが必要とされます。すなわち、引用発明の構成cを構成Cや構成Cのうちのcでない何らかのものに置換することが容易であれば、本願発明②の拒絶理由は解消されないと思われます。